公開日:2026年4月1日

竹田ダニエルが読み解く映画『ウィキッド』。ファンタジーが映す現実と “For Good” が教えてくれること

映画『ウィキッド』の後編が日本でも公開。作品が伝えたかったこととは?

映画『ウィキッド 永遠の約束』 メインヴィジュアル

アリアナ・グランデ、シンシア・エリヴォが主演を務めた公開中の映画『ウィキッド 永遠の約束』。この作品を愛してやまないという作家・研究者の竹田ダニエルが読み解く。長年愛されてきたミュージカル『ウィキッド』の物語は、ファンタジーを通して現実社会を映し出しているようにも見える。“For Good”という言葉に込められた、「人は他者との関係のなかで変わる」というテーマを手がかりに、この作品の魅力と社会性を考える。

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ミュージカルを超えた『ウィキッド』という文化現象

アメリカにおいて『ウィキッド』は、たんなる人気ミュージカル以上の存在だ。2003年のブロードウェイ初演以来、20年以上にわたって上演され続けており、現在ではブロードウェイ史上でも最も長く続く作品のひとつとなっている。世界中で6500万人以上が観劇したとされ、その楽曲やキャラクターはテレビ番組やポップカルチャーのなかでも繰り返し引用されてきた。とくに第1幕のクライマックスで歌われる「Defying Gravity」は、自己解放や社会への抵抗を象徴する楽曲として広く知られており、ミュージカルを見たことがない人でも知っているほどの文化的アイコンになっている。社会から抑圧を感じたり、アウトサイダーとしての苦しみを感じているアメリカで暮らすマイノリティたちにとっては、救いでもあり、勇気をくれる重要な作品である。私自身、ブロードウェイを含めて舞台版を三度観ているほど個人的に思い入れの強い作品であり、映画化を待ち望んだひとりでもある。

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20年以上、アメリカや世界各地で愛されるミュージカル『ウィキッド』

映画版『ウィキッド ふたりの魔女』は、ミュージカル映画としては異例とも言えるほど大きな成功を収めている。アメリカでは2024年11月の公開後、わずか1週間で歴代ミュージカル映画の興行収入トップ10にランクインし、ブロードウェイ作品の映画化としては史上最大級のオープニング記録を更新した。SNSでも公開前から議論と分析が盛り上がり、公開後は映画の感想や楽曲のクリップがタイムラインを埋め尽くした。ミュージカル映画というジャンルは長年「ニッチ」と言われ続けてきたが、この作品はその認識を完全に覆したと言っていい。

左から、アリアナ・グランデ演じるグリンダ、シンシア・エリヴォ演じるエルファバ © Universal Studios. All Rights Reserved.
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